動作表現 スポーツ




①引く、引っ張る(pull)という動作はない

人の引っ張るという動作はその外観から上肢の筋の作用が強く見えるが、実際は重心が移動し、それに伴い固定された腕が移動している。
例えばA、Bの2人の人が向かい合い、AがBの手関節を掴み引っ張るという行為を行ったときは、一見Aが上肢の筋を使いBを引っ張り自分の方へ寄せているように見える。しかし、今度はAの後方に壁などを用意し、Aの臀部と踵を壁につけます。そして、Aが後方へ身体を傾け重心を移動できないようにする。この状況ではAはBを引き寄せることはできない。反対にAはBへ倒れかかり、つんのめるような動きになる。つまりAは引き寄せているのではなく、自身の重心を後方に移動させ、その重心位置変化に応じてBを移動させているのである。このような重心位置のことを位置エネルギーやpotential energyという。この時、上肢の働きはBとの距離を保ち固定している状態である。
人の正確な動作を表す時に引っ張るという表現は適切ではないため、誤解のない表現を使うように言葉を選ばなければならない。
また、人の動作は正確に言い表すことが大切であり、このことを動作視点・動作視座と表現する。
日頃は当たり前のように引く・引っ張るという言葉を使っているが、この重心を移動させるという考えをもつことでトレーニングや日常生活でも捉え方や感覚が変わってくると思われる。今後は日頃からも意識して多角的な視点をもって動作を見ることができるように心掛けていきたい。

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