世界3大投資家ジム・ロジャーズの直言、「日本の好景気はうわべだけ」

株式

2018年12月25日、日本株は1年3カ月ぶりに1000円超の急落を見せた。実はこの急落は、これから続く恐慌の予兆かもしれない。世界的投資家であるジム・ロジャーズは「安倍政権の経済政策は日本の将来を滅茶苦茶にするものだ」と警鐘を鳴らす。

「投資の神様」が見通す日本経済の未来とは?

うわべだけの好景気に騙されるな

アベノミクスによる金融緩和で、以前に比べて足元の景気は良くなった。人手不足もあって賃金が上昇に転じ、物価は日銀の2%インフレ目標には達しないものの、デフレは免れている。株価もこの数年で約3倍になった。

しかしそれは、うわべだけの好景気に過ぎない。いま日本株が従来よりも高値をつけているのは、日本銀行が紙幣を刷りまくり、そのお金で日本株や日本国債を買い支えているからに過ぎないのだ。紙幣を印刷し続けると、そのお金はどこかに行かないといけない。土地に行く場合もあれば、金に行く場合もある。ただ歴史的に見ると、多くの場合、そのお金は株式市場に行く。

1970年代のアメリカでも、お金の流れは同じような動きを見せた。多くの金が、株と金に流れた。石油にも流れた。1980年代のイギリスでは、株だった。第一次世界大戦後のドイツでもひどいインフレが起きて通貨が暴落し、株価は青天井で急騰した。インフレがひどくなると、人は何かを所有したくなるものだ。紙幣よりも実体があるもの──たとえばテーブルなどを。

ただ大概の場合、お金の安全な避難先は株になる。不動産でもいい。インフレ後のドイツで莫大な資産を築いたのは、紙幣をたくさん持っていた人ではなく、株と不動産に投資していた人だった。

いつか「安倍が日本をダメにした」と振り返る日が来る

いまの日本の状態は、「紙幣を刷れば株価が上がる」という市場の原理に則っているだけだ。だが、それが根本的な解決策にならないことは、先ほどのアメリカ、イギリス、ドイツの例を見たらわかる。紙幣を刷りまくっても駄目なのだ。

アベノミクスが成功することはない。安倍政権の政策は日本も日本の子どもたちの将来も滅茶苦茶にするものだ。いつかきっと「安倍が日本をダメにした」と振り返る日が来るだろう。

とはいえ、皮肉なことに私のような投資家にとっては、最高の状態と言える。株価が上がるので、投資家やストックブローカーにとっては好都合なのだ。2012年、安倍氏が内閣総理大臣になることが明らかになった段階で、私はすぐさま日本株を買い増ししたくらいである。安倍氏は「紙幣をさらに刷る」と明言していたからだ。

日本の企業は保護されすぎている傾向があるので、紙幣が刷られればそれだけ利益が上がり、株価も上がる。日銀が利上げを決めたら心配が増すが、すぐに日本株の買いをやめるかどうかは、状況次第だ。すぐには行動せず、しばらく様子を見てから決めるだろう。

ジムロジャーズが「市場が暴落しても保有しておく株」とは

日本の株価が上がったといっても、まだ2万円台程度(2018年12月現在)。1989年末の最高値より4割も低い。当然ながら、株価が落ちている時に買う方が、最高値にある時に買うよりも儲かる。

私はかねてより、「世界中の市場が暴落しても、日本株と中国株、ロシア株は保有しておく。この3つは景気減速の影響を受けることが少ないから」と述べている。アメリカ株は、いま最高値にあるから買わない。日本は株を買うのに最適とは言えないが、まだ「まし」な国だ。「悪くない」と言ってもいい。

ここまで、短期的な視点から日本経済への評価を述べてきた。ただ、時折日本のインタビュアーから「長期的な時間軸から、アベノミクスへの評価を」と尋ねられることがある。けれども、「このままでは、日本に長期的な時間軸はない」と答えざるを得ない。ここまで人口が減少しているにもかかわらず、子どもを作ろうとしないのだから。

日本政府は時には子どもを作るようにインセンティブを与えるが、いつもうまくいかない。そこに人手不足で賃金が上がっていく。老人が増え、社会保障費もどんどん膨れ上がる。だから、日本には長期的な時間軸はないと言うのだ。

ちなみに韓国も少子化問題を抱えているが、朝鮮半島が統一されたら、状況は好転するだろう。北から女性がたくさん南に入っていくし、安い労働力も入っていく。いつの日か日本を打ち負かすだろう。

 

ジム・ロジャーズの新刊『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(PHP新書)

コメント

タイトルとURLをコピーしました