伊ウニクレディト銀行の再建策、銀行危機打開に重要な節目

イタリアの銀行最大手ウニクレディト(CRDI.MI)が発表した経営立て直し策は、同国の銀行危機打開に向けた1つの重要な節目だ。

コスト圧縮や不良債権処理、大規模増資を打ち出したことで、同行は間もなく懸念要素でなくなるだろう。来年の国内政治が波乱に見舞われようとしているだけに、好都合と言える。

すべてのイタリアの銀行は低金利と多額の不良債権に手足を縛られている。しかしウニクレディトのコアTier1(主に普通株で構成される中核的自己資本)比率が10.8%と低いことと、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)(BMPS.MI)が引き続き青息吐息の経営状態にあることが、2大不安要素となっている。さらに憲法改正を問う国民投票の否決を受けて政治的な不透明感が広がる中で、ウニクレディトが時価総額にほぼ匹敵する規模の130億ユーロという増資を投資家に支援を頼むのは、多大な注文だ。

ムスティエ最高経営責任者(CEO)は既に残念なニュースも発表している。ポーランド第2位の銀行ペカオ(PEO.WA)など収益性の高い事業の持ち分売却だ。ただ増資によって不良債権の引当率は、現在の約60%(破綻先債権向けは40%強)から77%に高まる。コアTier1比率は12.5%まで上昇する。貸倒損失の減少と、支店および人員の削減などを通じた170億ユーロ規模のコスト圧縮を通じて、昨年5%だった有形株主資本利益率は2019年までに9%前後に達するはずだ。

もっとも有形株主資本利益率がせいぜいウニクレディトの資本コスト並みになるという点を考えれば、これは必ずしも素晴らしい事態ではない。ドイツ子会社は、売却すればコストがかさむし、万が一イタリア債券市場を巡って市場がパニックになった場合は収入を確保できる先になるとはいえ、経営全体には依然として足かせとなっている。一方でバリュエーションの観点では、現在0.5倍というウニクレディトの有形資産倍率は上昇余地がある。BREAKINGVIEWSの計算では、増資を考慮した適正水準は0.8倍を超える。

足元のイタリアの銀行セクターは、ウニクレディトとインテーザ・サンパオロ(ISP.MI)という2本の柱に支えられている半面、2つの懸念がある。1つは、より規模の小さい銀行の引当率をウニクレディト並みに上げるには、メディオバンカの試算で90億ユーロのコストがかかるとこと。もう1つは、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の五つ星運動が政権を掌握してイタリアがユーロを離脱するような展開になれば、ウニクレディトが新株発行の前提としている来年のイタリアの国内総生産(GDP)成長率の1%弱は、投資家にとって楽観的過ぎる見通しになってしまうことだ。

それでもウニクレディトが経営立て直し計画は十分にしっかりした枠組みだし、大手行がより健全になれば小規模な銀行にとっての選択肢が増えてもおかしくない。欧州全体が泥沼でもがく可能性があると想定しても、ウニクレディトがそうあるべき必要はない。

コラム:伊ウニクレディトの再建策、銀行危機打開に重要な節目
イタリアの銀行最大手ウニクレディトが発表した経営立て直し策は、同国の銀行危機打開に向けた1つの重要な節目だ。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました