26歳で脳梗塞「仕事、仕事で笑顔が減った」 母が気付いた娘の異変 いま新入社員に伝えたいこと

沖縄本島に住む女性(31)が、県内の携帯電話ショップの店長だった26歳の時に脳梗塞を発症したのは過重労働との関連性が強いとして、昨年11月に労災認定された。社会人経験が浅い中、販売ノルマや部下を束ねる役割に追われ「過労死ライン」を超える残業を重ねていた。各企業に新入社員が仲間入りする4月。働き方改革関連法が順次施行され、残業の罰則付き上限規制も始まった。若い働き手たちがブラック労働を見極め、心身を守るためには何が必要なのだろうか。(学芸部・新垣綾子)

医療費に驚き

 自己負担と健康保険でカバーされる額を単純計算すると約1千万円-。女性は労災認定後の手続きの中で、脳梗塞発症から退職まで1年半の入院や治療にかかった医療費を知り、驚いた。「これからばりばり働ける人間の人生を狂わせただけでなく、社会にも大きな負担をかけることを会社側は認識してほしい」

携帯の販売代理店を担う会社には、大学3年の時に参加した企業説明会で「人材育成に積極的」と好印象を抱いた。もともと接客業が希望で、やりがいを感じた。

一方でノルマはきつく、十分な教育も受けないまま入社4年目の25歳で店長を任されると、日々の報告書作成や責任者会議への出席などでさらに多忙になった。それでも「若くて判断力がなかったからか、文句を言える立場にはないと思っていた。先輩や同期が辞めていっても、自分は頑張ろうと逆に奮い立った」と振り返る。

辞めさせる勇気も

 入社当初からの習慣で、シフト上の勤務を終えるといったんタイムカードに打刻してサービス残業を重ね、仕事を家に持ち帰ることもあった。女性の母親は店長になり1人暮らしを始めた娘の異変を「いつも仕事、仕事で、笑顔も会話も減った」と心配していた。「周りが説得し辞めさせる勇気も必要と、今なら思う」と悔やむ。

労働基準監督署に認定された女性の発症前1カ月の残業は、109時間21分に及んだ。タイムカードに残らないサービス残業分は、ショップが出店する大型商業施設に出入りした入退店記録などとの時間差から算定。国が定める「残業1カ月100時間、2~6カ月の平均で80時間」の過労死ラインを上回った。

発症から5年。女性は後遺症のため、駆け足やジャンプが難しく右手の感覚も鈍い。「時がたち元通りにならない体を受け入れる一方で、私のようなケースが繰り返されないよう声を上げようと考えるようになった」と胸の内を語る。

また春が訪れ、真新しいスーツ姿の若者や、就職活動に乗り出す学生を目にすると「大丈夫かな」と心が騒ぐ。耳障りの良い企業PRに惑わされず、少しでも労働法の知識を身に付け自分を守ってほしいと思う。

ブラック企業の典型例 疑問感じたら相談を

◆今野晴貴NPO法人代表

東京と仙台を拠点に、若者の労働相談などに応じるNPO法人「POSSE(ポッセ)」の今野晴貴代表(35)は、女性のケースについて「労働環境を整備し生産性を上げるより、少ない人数で安く長く回して利幅を増やそうとする。サービス業に多い、典型的なブラック企業の働かせ方だ」と指摘する。

その上で沖縄の現状を「サービス業の割合が高く、賃金水準が低いのでブラック企業の問題がもっとクローズアップされていいはずだ。ところが、狭い社会だからなのか表面化しにくく、労働弁護士のような支援者も圧倒的に不足している」とみる。

ブラック企業を判断するいくつかのポイントに離職率と固定残業制の有無を挙げる。固定残業制は一定額の手当を残業代とする賃金体系だが、残業代を含めることで月給を高いように見せかけ、手当を上回る分は支給せず長時間働かせる違法な企業があるからだ。

また、企業や大学などを通した情報は「公式見解しか言えない可能性があり、注意が必要」とし「社内に知人や親戚がいれば、そこから業務内容やその人の健康状態を探ってみるのも手だ」と勧める。

ただ実際は、入社してみないと分からないことの方が多い。県外では新入社員や管理職向けに、大声を張り上げたり、人格を否定したりする理不尽な研修を強いる大手企業もあり「判断力を奪い、組織に従順な社員をつくっている」と批判。

「業務で心身を病んでも、自分だけの問題にとどめ、泣き寝入りしている労働者は少なくない。何かおかしいなと感じたら、労働相談の窓口にまずは問い合わせてほしい」と呼び掛けた。

ポッセ(東京)への相談は、電話03(6699)9359、メールsoudan@npoposse.jp

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190402-00403417-okinawat-oki&p=1

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