「転職は慎重に」それでも転職活動は積極的にした方がいい3つの理由

日常生活

いま、売れに売れているビジネス書があります。就活サイトを運営する「One Career(ワンキャリア)」執行役員の北野唯我さんの『転職の思考法』は、あっという間に10万部を突破したとのことです。

まるでテレビドラマを見ているかのような、軽妙な小説仕立ての構成もさることながら、今までありそうでなかった「思考法」にフォーカスしているのがポイントです。

転職の仕方以前に転職すべきかを悩んでいる人は多い。
これまでの「転職本」のほとんどは、転職のハウツーやテクニックにフォーカスしていましたが、日本の会社員の大多数は「このまま今の会社にいていいのだろうか……」とモヤモヤしている状態。転職のハウツーを知りたいわけではなく、そもそも転職すべきなのか、今の会社に残るべきかについて悩んでおり、それを考える上でのものさしや思考法を必要としていたのです。

『転職の思考法』は、そうした会社員の潜在ニーズをうまく捉え、本質的で、転職どころか「キャリアを考えるビジネス書の決定版」と言えます。

「転職が怖い」という相談
筆者も、今でこそ「複業研究家」という謎な肩書きで仕事をしていますが、ファーストキャリアは国内トップの転職エージェント、リクルートエージェントで、人材紹介営業からスタートしています。数百人の転職に立ち会い、プライベートでもこれまで数百人の転職相談に乗ってきました。今でも多くの方のキャリア相談に乗っています。

そんな中で、キャリアに悩んでいる方から「今の職場で働き続けるのは正直苦しい。でも、転職するのは怖いんです。どうしたら良いですか?」というご相談をいただくことが非常に多いです。

そう、多くの会社員にとって、「転職」は怖いものなんです。大きな決心をしないと、踏み出せない。
「転職」という言葉が「転落」や「転ぶ」などネガティブなイメージを想起させるのか、まるで清水の舞台から飛び降りるかのような思いで、転職を捉えているのです。

そうした方々に対していつもしているアドバイスが、「転職は、慎重に。でも、転職活動は積極的に。」です。
「仕事を大切に、転職は慎重に。」は有名なエンジャパンのキャッチコピーですが、やはり転職そのものには慎重になった方が良いのは間違いありません。

「今の職場があまりにもブラック労働を強いる職場なので、働き方を変えたい」と思い、焦って転職をした結果、前の職場よりもさらにブラックな職場で働く羽目になってしまった……ということも少なくありません。だから、会社を辞め、新たに入社する会社を選ぶ際は熟慮は必要で、慎重になるべきなのです。

転職活動はキャリアの「健康診断」
今の仕事に満足していても、転職活動はキャリア形成の大きな助けになるという。

一方、「転職活動」自体はぜひ積極的にすべきです。転職活動は、キャリアにおける「健康診断」と言っても良いかもしれません。仮に「自分は健康だ」と思っていても人間ドックの受診が必要なように、仮に今の仕事や職場に何の不満もなかったとしても、転職活動をしてみることをオススメします。

転職活動によって得られるものは、大きく3つあると筆者は考えています。

自分の市場価値を測れる
マーケットのトレンドを知れる
自分の「人生のコンパス」を確かめる機会になる
それぞれ、簡単に解説しましょう。

(1)自分の市場価値を測れる

転職活動の「はじめの一歩」は、自分の経歴や実績を整理するところからはじまります。新卒で入社してから今に至るまでの経歴を「職務経歴書」にまとめてみましょう。スマートに履歴書や職務経歴書を作成できる「Proff」がオススメです。できるだけ具体的な数値や達成率を記載することを忘れずに。
「Proff」
https://proff.io/

履歴書・職務経歴書を作成したら、さっそくリクルートエージェントやビズリーチに登録してみましょう。すると、あっという間にものすごい数のスカウトメールが届く、はずです。スカウトメールが多数届くようであれば、あなたの市場価値は比較的高いことが分かります。年収がどれくらい上がるか?など具体的な金額が知りたければ、転職エージェントを活用したり、実際に選考に進んでオファーを受けるところまで転職活動をしてみるのもアリです。

(2)マーケットのトレンドを知れる

筆者自身、リクルートキャリアに勤務していた時代は、1年に1度は転職活動を行っていました。一番楽しかったのが「いまホットな業界の、ホットな企業の、ホットな求人を知れること」でした。求人サイトはトレンド情報の宝庫です。その先で出合える企業との、対面での面談やディスカッションで知れる情報は、「ここでしか知れない話」が満載です。

昔は企業が個人を評価・ジャッジするための面接ばかりでしたが、今は違います。Wantedlyという求人メディアには「話を聞いてみたい」というボタンがあり、その先にはお互いの理解を深める「カジュアル面談」が用意されており、その会社の事業内容や、業界トレンドなどもつまびらかに教えてもらえることが多いです。

(3)自分の「人生のコンパス」を確かめる機会になる

職務経歴書を作成する中で自分の経歴を整理したり、複数の企業の人事や経営者・事業責任者に会って質問をしたり、されたりする過程を通じて、「自分が本当にやりたいこと、挑戦したいことは何だろう?」「自分が変えたくないもの、譲れないものはなんだろう?」と考えざるを得なくなります。

その過程を通じて、自分は一体どこに向かっていきたいのか、そのために何が必要で、今の自分に何が足りないのかが見えてきます。転職活動を通じて、自分の「人生のコンパス」の輪郭がよりはっきり、くっきり見えてくるのです。

「転職」ではなく「変職」へ
「職を転じる」と書いて、「転職」。上述の通り「転職」という単語からは、「転ぶ」「転落する」といったようなネガティブなイメージを思い浮かべてしまいます。終身雇用制度が機能していた時代においては、その名の通り「転職」は「転落のリスク」を持った勇気のいるアクションでしたが、今はそういう時代ではありません。

むしろ、「一生食える」ビジネスパーソンで居続けるためには、常にアンテナを高く立てて、(1)自分の市場価値を測り、(2)今の仕事の「寿命」を知り、(3)伸びる市場にピボットすることが重要な時代になっています。つまり、腰を落ち着けて一つの分野で成果を上げて競争優位性の高い「強み」を獲得しつつも、マーケットのトレンドの変化に合わせて、自らのキャリアや職業を容赦なく変え続ける「変身力」が必要となります。

「変身力」を高める手段の一つとしても、転職は当たり前の選択肢になっているでしょう。

転職は英語では「Job Change」と言います。いずれ「転職」という言葉はなくなり、本来の字義どおり、「ギアチェンジ」と同じくらい、シームレスに職場や職業を変える「ジョブチェンジ(変職)」という言葉に変わってゆくことでしょう。

西村創一朗:複業研究家、HARES・CEO。2011年リクルートエージェント(当時)で中途採用支援、人事・採用担当を経験。2015年に複業の普及や育児と仕事の両立を目指すHARESを設立。会社員との兼業期間を経て、2017年に独立。

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