「あの指導のおかげで成功した」 との思いからかもしれません。
でも、 肯定派の人に聞きたいのです。
指導者や先輩の暴力で、 失明したり大けがをしたりして選手生命を失うかもしれない。
それでもいいのか、と。
私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しをされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。
監督が采配ミスをして選手に殴られますか? スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。
殴られるのが嫌で、 あるいは指導者や先輩が嫌いになり、野球を辞めた仲間を何人も見ました。
指導者が怠けている証拠でもあります。 暴力で脅して子どもを思い通りに動かそうとするのは、最も安易な方法。
昔はそれが正しいと思われていました。でも、例えば、野球で三振した子を殴って叱ると、次の打席はどうすると思いますか?
何とかしてバットにボールを当てようと、スイングが縮こまります。
それでは、正しい打撃を覚えられません。
「タイミングが合ってないよ。どうすればいいか、 次の打席まで他の選手のプレーを見て勉強してごらん」。
そんなきっかけを与えてやるのが、 本当の指導です。
今はコミュニケーションを大事にした新たな指導法が研究され、
多くの本で紹介もされています。
子どもが10人いれば、 10通りの指導法があっていい。「この子にはどういう声かけをしたら、 伸びるか」。
時間はかかるかもしれないけど、 そう考えた教え方が技術を伸ばせるんです。
「練習中に水を飲むとバテる」と信じられていたので、 私はPL学園時代、 先輩たちに隠れて便器の水を飲み、渇きをしのいだことがあります。
手洗い所の蛇口は針金で縛られていましたから。
でも今、 適度な水分補給は常識です。
スポーツ医学も、 道具も、 戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。
体罰を受けた子は、 「何をしたら殴られないで済むだろう」という後ろ向きな思考に陥ります。
それでは子どもの自立心が育たず、 指示されたことしかやらない。
自分でプレーの判断ができず、 よい選手にはなれません。
そして、 日常生活でも、スポーツで養うべき判断力や精神力を生かせないでしょう。
「極限状態に追い詰めて成長させるために」と体罰を正当化する人がいるかもしれませんが、
殴ってうまくなるなら誰もがプロ選手になれます。
私は、体罰を受けなかった高校時代に一番成長しました。
「愛情の表れなら殴ってもよい」 と言う人もいますが、 私自身は体罰に愛を感じたことは一度もありません。
伝わるかどうか分からない暴力より、 指導者が教養を積んで伝えた方が確実です。




コメント